少林寺拳法は、護身術です。

最近では、子どもの安全を心配する保護者も多く、護身術を掲げて生徒を募集する武道や格闘技、武術の教室もあります。

実際、この少年団でも、子どもたちに身につけてほしい力の一つとして「護身」を掲げています。
そこで、私なりに「護身」をどう考えているのか、書いておきたいと思います。

戦える=護身ではない

少林寺拳法の技法は、護身術として大変優れています。
少林寺拳法には、目や金的といった急所への攻撃を含め、自分の身を守るための技法があります。

もちろん、子どもたちには安全に十分配慮しながら、技法の意味や、むやみに人に使ってはいけないことも含めて指導します。

また、様々な技法があり、どれも護身として役立つものだと思います。

しかし、大事にしていることは、「戦える=護身ではない」ということです。

護身とは何か?

「コトバンク」によると、護身とは「他から加えられる危険から身を守ること」と書かれています。

身を守るために、戦うこと。とは書かれていません。

以前、私も、とある方が開催されていた護身教室に体験に行ったことがあります。
そこでは、「ナイフを持った相手と向き合う方法」を教えていました。

生徒さんは真面目に取り組まれていましたし、そうした技術にも意味はあるのでしょう。
ただ、私が考える護身とは少し違うな、と感じて、その体験だけで終わりました。

私の考える護身

子どもに教える立場であり、少林寺拳法の拳士として「護身」とは何かと問われたら、私は「危険から逃げること」を優先して説明します。

特に子どもたちには、「少林寺拳法でやっつけろ!!」とは絶対に言いません。

普段の練習から、大きな声で気合を出す。
それによって、いざというときに「助けて!!」「やめろ!」と声を出せるか?

そっちのほうが大事だと思っています。

ただし、実際に怖い思いをしたとき、恐怖で声が出なくなることもあります。
声が出なかったからといって、悪いわけではありません。

逃げる、近くの大人に助けを求める、防犯ブザーを使う。
その場でできる方法で、自分の身を守ることが大切なのです。

そりゃもちろん、手を引っ張られたときに、少林寺拳法の技法を使って思ったように手を抜くことができればいいです。

しかし、実際に危険な場面で技法を使えるようになるには、相当な訓練が必要です。
それでは、達人の域に達するまで、少林寺拳法は護身術として役立たないのでしょうか?
私はそうは思いません。

ネットで見つけた護身の練習

以前、ネットの動画で、子どもが防犯ブザーをすぐに取り出して鳴らし、相手に投げつける練習を、繰り返し行っている方を見かけました。

これは、とてもいいことだと思いました。

実際、防犯ブザーを持っていても、いざというときにすぐ取り出せなかったり、怖くて鳴らせなかったりする可能性があります。
だからこそ、普段から使い方を確認し、練習しておくことが大切なのです。

これもしっかりした護身術の一つだと思います。

護身については考え方から教える

「少林寺拳法は護身術だから、習えば自分の身を守れるようになります」

これは、間違いではありません。

しかし、少林寺拳法を習ったからといって、すぐに自分の身を守れるようになるわけではありません。
私は、護身については、技法よりも先に教えるべきことがあると考えています。

それが、次の3つです。

1.嫌なことから離れること

そもそも、危険に近づかないことが第一です。

そのためには、自分が嫌だと思うこと、怖いと思うことから離れる判断ができるようになることが大切です。

例えば、友達から危ないことに誘われたとき。

「友達だから断れない」と思う必要はありません。

嫌なことは嫌だと言っていい。

無理に付き合う必要もありません。
少しおかしいな、怖いな、と感じたら、その場から離れていいのです。

そして、自分だけで解決できなければ、周りの大人に相談していい。

子どもには難しい話かもしれません。
しかし、こうした判断力を育てることも、少林寺拳法の考え方である「すべては人の質」に通じるものがあると思っています。

2.危険なところに行かないこと

当たり前すぎる話かもしれませんが、危険な場所には近づかないことです。

例えば、夜遅くに一人で出歩かない。
人通りの少ない場所をできるだけ避ける。
知らない人に誘われても、安易について行かない。

こうしたことも、大切な護身です。

ただし、子どもは普通に学校へ行ったり、公園で遊んだりしているだけでも、危険な目に遭うことがあります。

危険を避けることは大切ですが、危険な目に遭った子どもが悪いわけではありません。

ここは、大人も忘れてはいけないことだと思います。
子どもだけに危険を避ける責任を負わせるのではなく、私たち大人が安全な環境をつくり、見守ることも必要なのです。

3.まずは逃げて、助けを求めること

それでも、危ない目に遭ったときは、まず逃げることです。

「助けて!」と大きな声を出すことも有効です。

自分が今、危険な目に遭っていることを、周りに知らせる必要があります。
しかし、先ほども書いたように、怖くて声が出ないこともあります。

そんなときは、防犯ブザーを使ったり、人がいる場所へ逃げ込んだり、近くの大人に助けを求めたりすることも大切です。

戦うことよりも、まず安全な場所へ逃げること。

そして、逃げたあとは、必ず信頼できる大人に話してほしいと思います。

それでも逃げられず、どうしても自分の身を守るために技法を使わなければならない場面があるかもしれません。

そのときに、少林寺拳法で身につけた技術が役立つこともあるでしょう。
しかし、それはあくまでも最後の手段だと考えています。

強さを履き違えてはならない

私の思う護身術における強さとは、単に相手を制圧できる強さではありません。
もちろん、自分の身を守るための技術は必要です。

しかし、その前に「危険に近づかない」「嫌なことは断る」「大きな声を出す」「逃げて助けを求める」といった、「いざというときの心構え」を教えるべきだと考えています。

何度も繰り返しになりますが、少林寺拳法そのものは実践的な護身術です。

しかし、少林寺拳法を始めた=護身術ができる、というわけではありません。

日々の修練を通して技術を磨くことはもちろん、先ほどの3つの護身の心得、そして「いざというときの心構え」も教えていく。

それが、子どもたちに少林寺拳法を指導するうえで、大切なことだと思っています。

そして、もう一つ。

子どもたちには、日々あったことを、お父さんやお母さんに話してほしいと思っています。
普段から何でも話せる関係があれば、子どもの小さな変化にも気づきやすくなります。

いつもと様子が違う。

急に元気がなくなった。

何かを怖がっている。

そんな変化があれば、学校や友達との関係など、何か困っていることがあるのかもしれません。

そんなときこそ、周りの大人が話を聞き、一緒に考えてあげることが必要です。

護身術は、決して「腕っぷし」の話だけではありません。

自分の身を守るための心得を育てること。

そして、子どもの周りにいる大人たちも、一緒になって子どもを守ること。

少林寺拳法は、そのための一つのツールであると考えます。

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